冷や汁の全国分布

冷や汁は、宮崎の郷土料理の代表のように思われていますが、実は宮崎だけではなく、国内各地に分布しています。

冷や汁の全国分布

昭和初期に家庭の台所を預かっていた女性達に聞き書きした日常の料理をまとめた『日本の食生活全集』(農文協)の各県版と、『産直コペル』という雑誌の2019年9月号に掲載された冷や汁特集から、冷や汁という名前の料理や、宮崎の冷や汁のように味噌味の冷たい汁をご飯やうどんなどとともに食べる料理を拾い出してみると、図のように、北は秋田県や岩手県から、南は鹿児島県まで30県に存在している(た)ことがわかります。

現在は廃れてしまって、ほとんど作られていない地域もあるようですが、冷や汁が宮崎オリジナルの郷土料理だと思っていた方には目から鱗なのではないでしょうか。

九州各県には、材料には若干の違いはあるものの、魚の出汁と麦味噌を組み合わせて最初から冷たくして作る、宮崎と同様の冷や汁が存在しており、中四国地方の瀬戸内海沿岸部には「さつま」という名で同じような料理があります。

「さつま」の名の由来が旧薩摩藩から来ているかどうかは定かではなく、夫が妻を佐(たす)けるために作る料理なので「佐妻」という説や、ご飯を椀に盛る際に汁をかけやすいようにしゃもじで十字に切れ目を入れる様が丸に十の字の薩摩藩の家紋のように見えることからという説があるようです。

小麦の生産が盛んな埼玉県や茨城県の冷や汁は、うどんや冷や麦などのつけ汁で、うどん店の夏場のメニューとして今も健在です。
味噌味でキュウリや大葉などの具材が入っていて見た目は共通ですが、砂糖やみりんが入ってやや甘くなっているものが多いので、宮崎の方が初めて食べると驚かれるかもしれません。

山形県の冷や汁は、高鍋藩出身の上杉鷹山公ゆかりの正月料理として伝わっていますが、宮崎の冷や汁とは全く異なり、干し貝柱や干し椎茸などの乾物でとった出汁を冷たくして、雪菜など季節の野菜を茹でたものと和えたおひたしで、他県の冷や汁とは一線を画しています。

(日高大介・フードアナリスト)

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