ひやしる? or ひやじる?

ひやしる?orひやじる?

皆さんは、「冷や汁」をどのように読んでいらっしゃいますか?
「ひやしる」、「ひやじる」、「ひやしゅる」、「ひやじゅる」、「ひやっちる」など様々な呼び名がありますね。

日本の食べ物の歴史を紐解くと、「ひやしる」という言葉は、平安時代から存在することが確認できます。
この頃の「ひやしる」は、現在我々が知る宮崎の冷や汁とは異なる食べものだったようですが、それについては稿を改めてお話しすることにしましょう。ともあれ、料理の名前として「ひやしる」には、長い歴史があるのです。

最後の無頼派と呼ばれ、料理家でもあった作家・檀一雄に『美味放浪記』というエッセイがあり、この中に宮崎の「冷ッ汁」という料理が出てきます。
私が読んだ中公文庫版には振り仮名は振られていないのですが、「ひやっしる」と素直に読みました。
すると、続けて読んだ同じ檀の『檀流クッキング』というエッセイには、「ヒヤッ汁」と出てきて、「汁」に「ちる」とふりがながありました。
これらのエッセイが書かれた昭和40年代に、檀は新聞社の連載の仕事で全国各地を旅しており、宮崎に訪れた際に知人の案内で冷や汁を食し、その作り方も学んだのでしょう。
そこで耳にした料理名は「ひやっちる」だったのです。

2018年に宮崎市内で冷や汁のイベントを開催していた時、こうしたお話しをして、言葉は時代とともに変遷するので、「ひやしる」でも「ひやっちる」でも「ひやじる」でもお好きなように読んでくださいと言ったところ、会場にいらしたNHK宮崎放送局のアナウンサーの方が、それだとアナウンサーとして原稿を読む際に困るのではっきりしてほしいと言われ、それなら古式ゆかしい「ひやしる」に統一しましょうと申し上げました。
宮崎県内でも、「ひやしる」と読んで欲しいとおっしゃる方は少なからずいらっしゃいます。しかし、今では宮崎県外では「ひやじる」と呼ばれることが多く、県内でも「ひやじる」という読みが増えているのは気になるところです。

日本語には、単語と単語が合体するときに、後ろの語の語頭が濁音に変わる「連濁(れんだく)」という特徴があります。
日本語の語彙には、和語・漢語・外来語・混種語がありますが、特に和語が合わさる場合は、連濁が起きるのが原則のようです。
例えば、鼻(はな)+声(こえ)=鼻声(はなごえ)や、花(はな)+火(ひ)=花火(はなび)、青(あお)+空(そら)=青空(あおぞら)のように、枚挙にいとまがありません。
冷や汁も、冷や(ひや)+汁(しる)という和語が重なる構造ですから、「ひやしる」が転じて「ひやじる」となるのも、日本語の特徴として仕方の無いことではあります。

しかしながら当協議会としては、冷や汁の読みは、クリアに「ひやしる」と呼ぶことを推奨したいと考えています。

(日高大介・フードアナリスト)

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